タグ ララビアータ
人気順 10 users 50 users 100 users 500 users 1000 usersララビアータ:稲葉振一郎氏への応答
稲葉さま 貴方のコメントは、貴方ご自身のブログに掲載されたものであり、わたくしへの私信ではなかったと思ひます。それゆゑ、わたくしがそれに応答しなかったことが礼節にもとるものとは思はれません。むしろ、他人のブログに出向いて行って応答を展開するのがご当人に迷惑なのではないかと忖度して遠慮してゐただけです。(もちろん、貴方がわたくしのブログにご訪問くださり、ご批判を頂戴することは、わたくしにとって迷惑な... 続きを読む
ララビアータ:戸田山氏『哲学入門』(2)進化論
人間特有の精神的諸現象を物理的世界に定位するための、戸田山氏の戦略は、容易に予想されるように、進化論に訴えることである。つまり、「意味」その他、特殊「人間的」と見られがちな「存在もどき」を、物の中から生物が生じ、それが進化してくる進化の歴史の中に位置づけ、いわば物理的世界と精神との連続性を印象付けようというもの。 このとき、進化の説明を、ある機能を身につけることが生き残りにより有利であるとして説明... 続きを読む
ララビアータ:戸田山和久氏の『哲学入門』(1)
当初私は、この本(ちくま新書)を詳しく検討して、細部にわたる批評を書こうと思っていた。そのためメモをつけながら読み進めたものである。しかし、読み進むうちに、そのような内在的検討に値する価値が、この本にはまったくないことが明らかになったので、ここで記すことは、大雑把で外在的な批判にならざるを得ない。もっとも、そのような外在的批判の対象として見るならば、なかなかに興味深い症候的(症例的)な所がないわけ... 続きを読む
ララビアータ:国会包囲闘争を闘って
残念ながら、世紀の悪法「秘密保護法」を阻止することはできなかった。今の段階でそのことについて、私自身の反省と考察を記しておきたい。 今般の闘争は、参議院選挙における歴史的敗北から、すでに敗北への道を進んできた。我々は、いや私は、あの選挙に絶望するあまり、しばらく政治やニュースに対するおおかたの関心を失っていた。テレビを見るとそこに映し出される面々が、政治家はもちろんニュースキャスターやテレビタレン... 続きを読む
ララビアータ:三木谷社長の暴論
英語教育に対する改革の提言はしばしば行われてきたが、それらが長い目で見て成果を上げたという話は聞いたことがない。教育論議一般に言えることであるが、現場を無視した政治的暴論であるか、ナルシシズムの吐露の域を出ていないものであるから当然であろう。 楽天の三木谷氏によれば、現在の英語教育は「文法と翻訳に特化している、会話力、表現力といった非常に重要なものが軽視されている。会話力や表現力を伸ばすためには、... 続きを読む
ララビアータ:小玉ユキ氏の『坂道のアポロン』
本作品は、読みやすく、読後にさわやかな印象を残す名作であり、アニメ化もされるほどよく知られたものだから、あらためて批評するまでもないとも思われるが、最近これについて友人と話をしたら、愛読者の間でさえ、重要な点が共通認識になっていないことがわかったので、気になる点を述べておくことにする。 いま手元にテクストがないので、記憶をもとに書くことになるので、思い違いがあるかもしれないことをあらかじめお断りし... 続きを読む
ララビアータ:野矢茂樹氏の『心と他者』(解説)
野矢茂樹氏の『心と他者』が、このたび中公文庫から文庫化されて出た。そのための「解説」を仰せつかったので、その部分をここで紹介しておこう。興味を持った方は、是非とも文庫をご購読いただきたい。わずか900円で、良質な知的愉悦を満喫できるはずである。 本書は、野矢氏が最初にまとまった形で持論を展開した記念碑的な作品である。それは、我が国の哲学の歴史にとってのみならず、氏自身にとっても記念碑的、ということ... 続きを読む
ララビアータ:橋下徹との非和解的闘争
目下のところ、言論に対する橋下市長のおぞましい弾圧が奏功したように見える。 このような場合、いかなる立場をとるかに関しては、己れの政治的経験のすべてがかかる重大な決断を強いられる。どのような立場をとろうとも、それぞれ理屈をつけることはできようが、問題は政治的決断であるから、それを理性的説得によって共有することは容易ではないかもしれない。それでも少なくとも態度表明は、すべての言論人の義務であると感じ... 続きを読む
ララビアータ:不倫と掟
最近のテレビ・ドラマで、気になる筋書きがあった。ひょんなことで不倫を犯した女が、夫にそれを告白して家を追いだされ、子供との接近も拒否される、というのである。ジャンクのような細部の説明は省略するが、大きな違和感があるので、そこに含まれる掟をめぐる問題を分析しておきたい。 まず、不倫を犯すこと自体は、まあいいとしよう。人間はおおよそそのようなことをしがちなものだから、それをどうこう言ってみても仕方ない... 続きを読む
ララビアータ:自由の敵
大阪では、卒業式に君が代を歌っているかどうか口元を調査する教頭がいるらしい。何とも滑稽とも恐ろしいとも言えることであるが、ここには明治以来我が国に固有の問題が現れている。 一般に、近代化とともに諸個人は古い共同体的紐帯から離れ、市場のアナーキーにさらされるにつれて、秩序維持の必要から、以前よりも強力な集権化と軍事力を必要とするものである。したがって「夜警国家」の理想は、常に幻想である。首尾よく近代... 続きを読む
ララビアータ:プラトンの『メノン』
メノン プラトンの『メノン』の新訳が、渡辺邦夫さんの翻訳で、光文社文庫から出た。 一読したところ、とても素晴らしい訳業だと感じた。光文社文庫は、古典の新訳を次々に出すというたいへん意欲的な試みをしている。渡辺氏の訳は、非常に自然な日本語でわかりやすいばかりではない。ごく最近の国際的な学術的研究成果を踏まえた本格的なものでもある(らしい)。私自身、古典学の最近の動向を知らないので、これは訳者あとがき... 続きを読む
ララビアータ:佐藤俊樹氏の『社会学の方法』
佐藤氏の新刊本(ミネルヴァ書房)を読んだ。以下、その読後感想を記すことにする。 本書の特徴は、単に諸社会学理論の概説とか、歴史というものにとどまらず、それらを生きた分析技法として使用する現場の勘所のようなものを教えてくれるところだろう。社会学に限ったことではないが、学問的知識は、単にまとまった完成された知の体系として学ばれるだけでは十分ではない。むしろ、自分で使って自分なりの分析道具として自由に活... 続きを読む
ララビアータ:菅首相を「支持」しよう
今や「輿論」はもちろん民主党内部にさえ支持を失った首相であるが、我々は今こそ彼を支持し、我々のために利用せねばならない。彼は、総理として生き残ることを望んでおり、生き残るためには、マスコミ、財界、官僚のあらゆる逆風をはねのけて、脱原発のスローガンに寄り掛かるしかないからである。 あれほどの惨事を引き起こしながら、誰ひとりとして明確な責任追及に取り掛かろうとはせず、互いにかばい合って乗り切ろうとして... 続きを読む
ララビアータ:兄からの提言
先日、ミュンヘンの兄からメールで、日本の内閣府のホームページに投稿したという意見を送ってきた。長年外国生活をしている理系の研究者からは、現在の日本の状況がどう見えるのかの一例として、参考までに以下に添付する。 「日本の危機管理の構造と大震災における問題点および提言」 田島俊樹、ミュンヘン大学物理主任教授 (6/11/11) 私は、30年間米国での研究生活の後、要請を受けて2002年に旧原子力研究... 続きを読む
ララビアータ:スピノザ的洞察
デカルトとスピノザほど違ったタイプの哲学者はいない、と言えるほど両者は違っている。 スピノザは『知性改善論』で、よく知られたデカルト批判を展開している。真なる認識に達するために、もし確実な方法が必要なら、それと同様にハンマーを造るのには、ハンマーを鍛える道具がなくてはならず、その道具を造るのにまた別の道具が必要となり…という具合で、ハンマーを造ることは不可能であるということになってしまう、というの... 続きを読む
ララビアータ:暴力について
内田樹氏は、『ためらいの倫理学』の中で、「私は戦争について語りたくないし、何らかの「立場」も取りたくない」(p−18)と述べている。それは、NATOによるユーゴ空爆に対して、スーザン・ソンタグがきっぱりと支持を表明したことに対する批評の言葉である。氏の批評の中には、耳を傾けるべき重要な論点がいくつか含まれている。たとえば「現場を直接経験した、または目撃した人間には、それについて語り、判断すべき何ら... 続きを読む
ララビアータ:原発ジプシー
堀江邦夫という方の『原発ジプシー』(1979)という本がある。今から30年以上前に刊行されているもので、堀江氏がみずから下請け労働者として原発作業に潜入し、その現場の実態をレポートしたルポルタージュである。高度経済成長のただ中、その裏側で厳しく危険な下請け労働がそれを支えていることを克明に記録したものだ。 この本が出版された頃、私は堀江さんを個人的にいささか応援したことがあった。どういうご縁であっ... 続きを読む
ララビアータ:東京消防庁の顔
原発の爆走を止めようと、多くの人が必死で働いているものと思われる。我々は固唾をのんでそれを見守りながら祈るだけだ。 しかし今まで、テレビに我々が見ていたのは、政治家やエリート役人と、話し方や態度物腰はもちろん、顔つきまでよく似た、あまり柄の良くない人々ばかりであった。彼らはみな等しく、国民をよほどの愚者と侮っているのか、見え透いた嘘を繰り返し、「国民は冷静に行動してください」と繰り返すばかりで、そ... 続きを読む