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人気順 5 users 50 users 100 users 500 users 1000 users「中東はいつから危険な場所となったのか」を知るための糸口(酒井啓子) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
「中東の歴史こそが、世界の現代史の縮図」。発売即重版となった中東政治の代位日人者・酒井啓子氏の著 『9.11後の現代史』 の冒頭部を特別公開します。 中東はいつから危ない場所になった? 筆者が教鞭を執る大学で、ときどき、中東報道に携わるジャーナリストや中東勤務の外交官、NGO職員などをお呼びして、話していただくことがある。 その際、学生たちから必ず出る質問がある。 「なぜ危ない場所だとわかっていて... 続きを読む
米軍シリア空爆は、イスラム社会の反米感情を煽るだけ | 酒井啓子 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
<現地社会へのインパクトを無視して実施された米軍のミサイル攻撃。シリアではアサド政権の支持派、反対派の双方に軍事介入への反発を残すだけ> トランプ米大統領の突然のシリア空爆には、驚いた。トランプ政権の対中東政策は、ビジネス優先で得にならないことはやらない、というのが基本だと、誰もが思っていたからだ。 シリア内戦に関して、「ISを叩く」との方針は別にして、トランプ政権は明確な方針を示してきたわけでは... 続きを読む
ザハ・ハディードの死 | 酒井啓子 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
世界的建築家、ザハ・ハディード女史が亡くなった。 2020年東京オリンピックの新国立競技場建設計画を巡るごたごたで、日本での訃報の伝わり方は、「揉め事の種」的扱いになってしまっている。彼女が数々の国際的な賞を受賞した、世界で超一流の建築家であることを考えれば、こうした報道ぶりはとても残念だ。イギリスでのメディアが一様に、「ロンドン・オリンピックで屋内競技場を設計したハディード女史」の早すぎる死を悼... 続きを読む
イラク:前門のIS、後門の洪水 | 酒井啓子 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
昨年末、「イスラーム国」(IS)から西部のラマディを奪回して勝利の報に酔いしれたイラクのアバーディ首相だが、今年一月、思わぬ敵に直面している。イラクの真ん中を流れるチグリス川上流の、モースル・ダムが決壊寸前の状態にあるからだ。このダムが崩壊したら、4時間でモースルは水没し、増水した川は1日以内でティクリートを、2日でバグダードを襲う。首都ではバグダード国際空港やサドル・シティーなどは被害を免れそう... 続きを読む
サウディ・イラン対立の深刻度 | 酒井啓子 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
サウディアラビアでのシーア派宗教指導者ニムル師の処刑、在テヘラン・サウディ大使館への抗議の暴徒化、イラン・サウディ間の国交断絶、親サウディ諸国の対イラン断交――。年頭から急に緊迫化した中東情勢に、友人がフェースブックでこう嘆いた。 「いつも『問題は宗派対立じゃない』といい続けてきたけど、またくりかえさなきゃならないのか」。 友人の嘆きのとおり、日本のメディアには、イラン=シーア派、サウディ=スンナ... 続きを読む
パリとシリアとイラクとベイルートの死者を悼む | 酒井啓子 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
先週、かつて日本に留学していたというシリア人の女性が、来日していた。留学から戻って、ダマスカス大学で日本語教師をしていたのだが、内戦と化したシリアで、今はシリア赤新月社の難民救援のボランティアをしているという。 彼女が、かつて学んだ校舎で日本人の学生たちに言った言葉が、重い。 「かつて私がここで学んでいたとき、自分の国がこんなふうになってしまうなんて、想像もしてなかった。みんなと同じように、普通に... 続きを読む
サウディアラビアの宗派間緊張に火がつくか | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
「イスラーム国」(IS)の脅威が、本丸に迫っている。 5月22日、サウディアラビア東部のシーア派人口の多いカディーフ市で、シーア派モスクが自爆攻撃によって攻撃され、21人が死亡した。それから一週間後の29日には、同じくシーア派人口の多いダンマン (ダンマーム)市でモスクが攻撃され、4人が死亡した。ダンマンはサウディ最大の油田地帯の中心都市にあたり、同国第二の港として日本の石油業界関係者にもなじみの... 続きを読む
中東やインドの女たちの英知 | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
中東で、北アフリカで、「イスラーム国」(IS)は相変わらず暴虐の限りを尽くしているが、それは少し脇において、3月は退職の季節だ。どこの大学でも長く教鞭をとっていた学者たちが、来し方行く末振り返って、学問の出発点を語る最終講義を行う。 今週は、長く親しくしていた先輩を囲む会があった。インドを専門とする女性研究者で、女性で途上国研究を志して海外に単独で出かけて行くなどというケースが、まだ数少ない時代に... 続きを読む
「お遊びの時間はおしまいだ」 | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
後藤健二さんとともに「イスラーム国」の人質にされていたヨルダン人パイロットのムアーズ・カッサーシバが、殺された。生きながら焼き殺されるという、残酷極まりない手口で。 ヨルダン国内はもちろん、アラブ諸国全体に激震が走っている。遺族はヨルダンのなかでも有力な部族で、激しい口調で報復を主張した。政府は国内に捕えられていたイラク人の死刑囚2人を、即刻処刑した。対「イスラーム国」包囲網に参加している湾岸の君... 続きを読む
人質殺害事件に寄せて | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
日本人人質事件は、残念な結果になった。 昨年六月に登場して以来、その残虐さで国際社会を震撼させてきた「イスラーム国」が、いかに深刻な問題かを、日本は遅ればせながら実感したことになる。 この問題について、筆者はあまり語ってこなかった。少ない情報で、しかも人命がかかっていることで、あれこれ語ることがいいとは思えなかったからだ。この事件に関する日本の報道を見ていると、解決に逆効果をもたらしたのではないか... 続きを読む
嫌イスラームの再燃を恐れるイスラーム世界 | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
シャルリー・エブド誌襲撃事件は、世界を震撼させている。欧米諸国を、というより、世界中のイスラーム教徒を、だ。 フランス版9-11事件ともいえるほどの衝撃を与えたこの事件に対して、イスラーム諸国は即刻、テロを糾弾し、フランスへの哀悼を示した。フランスと関係の深い北アフリカ諸国や、経済的なつながりの強い湾岸諸国はむろんのこと、ほとんどの中東の政府、要人が深々と弔意を示している。エジプトにあるスンナ派イ... 続きを読む
「理」なき殺し合いの怖さ | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
ラマダン(断食)月が終わった。今日(7月28日)からイード・アル=フィトルというラマダン明けの休日が始まり、イスラーム教徒はお正月のように、口々に「今年もおめでとう」と祝い合う。子どもたちに衣服を新調し、連休を利用して菓子折りもって親戚回りをするのも、お正月みたいだ。 だが、今年ほどお祝いムードどころではない年はない。イスラエルのガザ攻撃によってパレスチナ側の死者はすでに1060人を超え、イラク北... 続きを読む
イラクはどこまで解体されるか | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
6月10日に北部モースルが陥落して以降、イラク分裂の危機が現実性を持って語られるようになった。「イラクとシャームのイスラーム国」(ISIS)勢力は、北はモースルからティクリートまでを、西はファッルージャからバグダードに向かうルートを制圧し、さらに東方のディヤーラ県まで勢力を拡大している。ISISの制圧地域が地理的に「スンナ派地帯」だからというので、「イラクの宗派別分裂」が言われるのだが、事態はより... 続きを読む
イラク:モースル陥落の深刻さ | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
恐れていたことが起こりつつある。 アルカーイダすら「絶縁」するほどの過激派、「イラクとシャームのイスラーム国」(ISIS)が、イラクで攻勢に出、イラク第3の都市、モースルを手中にいれたのだ。 ISISは、すでに今年初めからファッルージャなどイラク西部で拠点を築き、イラク国軍と抗争を繰り返していたが、6月に入ってバグダードの北125kmにあるサマッラーに攻勢をしかけるなど、活動範囲を急速に拡大してい... 続きを読む
「アンネの日記」事件に思う | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
「アンネの日記」が、東京の各地の図書館で、破られたり廃棄されたりするという事件が起きている。欧米と違って、反ユダヤ主義的な行動が歴史的にあまり見られなかった日本で、こうした事件は珍しい。誰が犯人か、さまざまな憶測を呼ぶなかで、筆者が一番心配したのは、その犯人捜しのなかで、単純な発想から、アラブ人やイスラーム教徒が疑いをかけられるのではないかということだ。 反ユダヤ主義にも縁が薄いのと同じく、日本の... 続きを読む
東日本大震災と戦争被害をつなぐ | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
東日本大震災で74人以上の生徒が津波に呑まれた、石巻市の大川小学校の惨事について、19日、検証委員会の報告が発表された。ちょうど1週間前、私を含めた国際政治を専門とする研究者たちは、その小学校跡を訪れたところだ。 なぜ、中東研究の私が被災地を視察するのか、疑問に思われるだろう。だが、震災も戦争も、当たり前の日常社会が根本からひっくり返されてしまうという点でよく似ているし、災厄からの復興に際して直面... 続きを読む
シリアとイラクのアナロジー | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
米軍によるシリア軍事攻撃のカウントダウンが始まった。 8月21日にアサド政権側が化学兵器を使った証拠がある、として、オバマ政権はシリアへの軍事攻撃を行う用意がある、と主張した。とはいえ、イギリスでは議会が対シリア攻撃を否決し、オバマ自身も議会に諮らざるを得ない状況。国際世論も消極的だ。 その背景に、イラク戦争での失敗が指摘される。大量破壊兵器の恐怖を煽ったあげくに強行されたイラク戦争では、米英など... 続きを読む
エジプトの「不愉快な現実」 | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
エジプトが混沌としている。 断食月明けの祝日が終わった直後の8月14日、軍は一斉にムルスィー前大統領派の強制排除に乗り出し、1週間で800人以上の死者を出した。衝突はその後も各地で続き、外出禁止令が発出され、20日にはムスリム同胞団の最高指導者ムハンマド・バディーア氏が拘束された。その前日には、ムバーラク元大統領の保釈可能性が浮上している。これはいったい何だ? 2年半前に転覆した旧体制を復活させる... 続きを読む
エジプト 反革命か革命の継続か | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
軍と大衆デモによってムルスィー政権が引き摺り下ろされた7月3日以降、エジプトで起きていることをどう見るか、国内外の議論は二分されている。それは「反革命」か、「革命の継続」か、という議論だ。 二年半前、「1月25日革命」で当時の長期独裁政権たるムバーラク大統領を辞任に追い込んだのは、雑多な勢力からなる大衆デモだった。無党派の若者層を中心に、旧左翼、リベラル、イスラーム主義勢力と、さまざまな人々が結集... 続きを読む
猪瀬発言:「イスラーム初」か「アジア初」か | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
猪瀬都知事の発言が原因で、オリンピックの東京招致に影が差している。 「イスラム国はけんかばかり」という侮蔑的表現が取り上げられることが多いようだが、その発言を弁解するときに「雑談のつもりだった」と言った、「イスラム圏初ってそんな意味あるのかなあ」という発言のほうが、筆者は気になる。なぜなら半世紀前に東京でオリンピックが行われたときの、最大のウリが「アジア初のオリンピック」だったからだ。 そこで思い... 続きを読む
アルジェリア拘束事件の背景にあるマリ戦争 | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
突然の事件に、驚いた。アルジェリアでの日本人拘束事件である。 13年前、凄惨な内戦に一応の終止符を打ち、一昨年の「アラブの春」では周辺国で政権が次々に倒れていくのを横目で見ながらも、アルジェリアのブーテフリカ政権は健在だ。反政府デモは少なくないが、原油輸出額は2003年以降急速に伸びていまや内戦時の七倍近く、経済成長率もここ数年2~3%と、悪くはない。今回被害にあった日揮をはじめ、伊藤忠、三井、三... 続きを読む
イスラエルのガザ攻撃が持つ意味 | 酒井啓子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
14日に始まったイスラエルのガザ地区への空爆は、一週間経ても収まる気配を見せない。パレスチナ人の被害は100人を超え、オバマ政権もクリントン国務長官に仲介を命ずるなど、対応に動き始めた。 なぜ突然、パレスチナでの戦闘が激化したのか。日本の報道の大半が「ガザを実効支配する"原理主義"組織ハマースがイスラエルにミサイルを撃ち込み、首都まで射程に入ったから」、それに対応してイスラエルが強硬手段に出た、と... 続きを読む